Home > 専門家向け > イベント関連文献など
ブログ更新情報
ブログを見る

携帯電話用QRコード

岡本亜美のオフィス  精神分析・心理療法 @東京都新宿区西新宿(初台)モバイル

携帯のバーコードリーダーでQRコードを読み取ることで、携帯版ホームページへアクセスできます。

イベント関連文献など

短期力動療法入門

2021年GWに短期力動療法入門のイベントを行いました。

精神分析は長期の治療であるのに対し、短期、あるいは時間制限の形で精神分析の短期化が目指され、その技法が開発されてきました。
「今日、短期力動療法と呼ばれるものには、ダーヴァンルーの「集中的短期力動療法」を中心に、そこから派生した「体験的力動療法」の様々なグループがあり、また別の流れとして、対人関係理論に基づくストラップらに起源をもつ「時間制限力動療法」などがあり、それぞれの用途は、その臨床場面での需要から生まれたものです。」(『心理療法の交差点2』)

現在は、ダーヴァンロー(ダーヴァン「ルー」と訳したり「ロー」と訳したり)とマランの仕事を起源とするインテンシブな短期力動療法(ISTDP)をも包括する概念として体験的力動療法(EDT)という言葉が用いられているようですが、どのEDTのアプローチも共通する特徴があり、その説明は明快です。ここでは『短期力動療法』の著者の一人でありDavanlooに20年以上の指導を受けたRobert J.Neborsky(サンディエゴ出身の医学博士)のBrain, mind, and dyadic change processes から引用します。

The therapist through ISTDP technique can access the patient’s unconscious in a remarkably short period by following the sequence of interventions invented by Davanloo and elaborated by Malan. If the dyad can overcome the constraints placed against feeling traumatically based emotion, rapid and long lasting change can and does occur. Deeply felt long-lasting emotional insights sustain the patient and reinforce the changes made during the psychotherapy.

ちなみにネボスルスキーは、アタッチメントに基づく(Attachment-Based)のAB-ISTDPの治療者で、この論文は、そのAttachment-Based ISTDPのトレーニングセンターの一つであるCalifornia Society for ISTDPのウェブサイトのResearchのページに載っています。実証研究にご関心のある方もそちらもぜひ。

EDTはダーヴァンローとマランにはじまるIS-TDP枠組みを共通の基盤とし、それぞれの特徴を持ちながら分化、発展してきました。現在、指導者の名前としてよく見かけるのはISTDPの名称をそのまま踏襲しているAbbssなどでしょうか。

ちなみにネボルスキーらのAttachment-Based ISTDP(AB-ISTDP)はinterpersonal neurobiologyとaffective neurosciencesの知見を体系的に取り入れ、運用化したものです。コア・トレーニングは、1年間に4回、週末に、3年間のaudio-visual supervisionによって構成されています。

そのほか、EDTのタイプとして、Alpert,Fosha,Sklarらの加速化共感療法(Accelerated Empathic Therapy:AET)、Fosha,Russellらの加速化体験力動療法(Accelerated Experiential-Dynamic Psychotherapy:AEDP)、Osimo,Steinらの集中型体験ー力動心理療法(Intensive Experiential-Dynamic Psyxhotherapy:IEDP)、Kaplanらのマインドフルネス式体験ー力動療法(Mindfulness Informed:MI-EDT),Magnavitaらのパーソナリティ指針関係心理療法(Personality-Guided Relational Therapy)、MaCulloughらの「感情恐怖療法」としても知られる短期不安調整療法(Short-Term Anxiety-Regulating Therapy:START)などがあります。


これらは『アタッチメントと親子関係 -ボウルビィの臨床セミナー』(金剛出版、
ボウルビィ著 バッチガルッピ編 筒井亮太訳)に収められたIE-DPのフェルッチョ・オージモの論考「体験ー力動心理療法:アタッチメント理論の治療応用」を参照しました。

IEDTA:International Experiential Dynamic Therapy Association
Types of EDT のサイトでは各技法を短い紹介文つきでチェックすることができますのでそちらも参考になさってください。

さて、短期力動療法は症状や行動については精神分析をベースとした考えを用いますが、その発展の歴史のなかで、精神分析とは異なる独自の道を歩み始めました。
前提として、短期力動療法と精神分析では、設定が異なります。まず、方法は自由連想ではなく、問題を焦点化し維持することを重要視します。
頻度は週一回、セッション数は数回から40回程度(平均15〜20回程度)で、最初から「短期」であることを患者さんに説明します。技法は「抵抗解除」と「体験促進」です。「いかに早く患者の防衛を緩め、真の感情体験をもたらすかという技法であり、このプロセス促進が、短期力動療法の要」です。(『短期力動療法入門』)


その前提として、適応を判断するためのアセスメントがとても重要で「問題をある程度限局化できること、改善や動機づけが可能なこと、無意識の素材や感情体験のインパクトに対する耐性の程度(過度な混乱をきたさない)」(『短期力動療法入門』より)などを見ていくことになります。

【文献】
ソロモン他 妙木・飯島(監訳)(2014) 短期力動療法入門.金剛出版
妙木 浩之(2010) 初回面接入門―心理力動フォーミュレーション.岩崎学術出版社

『短期力動療法入門』は「翻訳で関わった本」で詳細に取り上げています。
以下は重複もありますがご参考までに。

第8章今後の展望(David Malan)で紹介されている本。
A Study of Brief Psychotherapy
Malan, D. H. 1963
Malan(マラン)を後押ししたBalint(バリント)のことも書かれています。
バリントは医療と心理療法をつなぐ重要な役割を果たした精神分析家です。
バリントに関してはこちらを。
『バリント入門』

インテンシブな短期力動療法について英語で読むならこれもお勧めです。
Mastering Intensive Short-Term Dynamic Psychotherapy: A Roadmap to the Unconscious  Robert J. Neborsky Josette Ten Have-De Labije


アタッチメントと親子関係 -ボウルビィの臨床セミナー』(金剛出版) 
ボウルビィ著 バッチガルッピ編 筒井亮太訳の原題
The Milan Seminar: Clinical Applications of Attachment Theory Author:John Bowlby, Editor: Marco Bacciagaluppi 

131頁〜フェルッチョ・オージモ「体験ー力動心理療法:アタッチメント理論の治療応用」 =Osimo, F. (2013) Experiential-dynamic Psychotherapy: an application of attachment theory  From the volume: The Milan Seminar by J.Bowlby, edited by M,Bacciagaluppi

Theory and Practice of Experiential Dynamic Psychotherapy

ByFerruccio Osimo, Mark J. Stein


マランはこちらも。
Individual Psychotherapy and the Science of Psychodynamics, 2Ed  邦訳は『心理療法の臨床と科学』(誠信書房)ですが品切れ・重版未定。


ダーヴァンローの論文集
Intensive Short-Term Dynamic Psychotherapy: Selected Papers of Habib Davanloo, M.D.


Changing Character: Short Term Anxiety-Regulating Psychotherapy
Leigh McCullough Vaillant


ーWebSiteー
IEDTA:International Experiential Dynamic Therapy Association
Types of EDT

IS-TDP(Intensive short-term dynamic psychotherapy

Lifespan Learning Institute

日本EMDR学会


フェルッチョ・オージモ IEDP(Intensive the model of Experiential-Dynamic Psychotherapy)
Intro to Intensive Experiential-Dynamic Psychotherapy (IE-DP) by Dr.Ferruccio Osimo


ダイアナ・フォーシャ AEDP(加速化体験力動療法
:Accelerated Experiential Dynamic Psychotherapy)


読書会報告&参考文献『精神分析における心的経験と技法問題 』

2020年年末にオンラインで読書会を行いました。
読んだのは2020年10月末に刊行された独立派の精神分析家、ハロルド・スチュワートの『精神分析における心的経験と技法問題 』(筒井亮太訳、金剛出版)、ゲストに訳者の筒井亮太先生をお招きしました。
https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b534144.html


筒井先生とは直接お会いしてお話ししたことはなかったのですが、先生が監訳者のおひとりとして翻訳されたマイケル・ジェイコブスの『ドナルド・ウィニコット』(誠信書房)の書評を書かせていただいたご縁でスチュワートの本もご恵投いただきました。私はこの翻訳が出ることを以前より楽しみにしており、せっかくなら翻訳しおわったばかりで誰よりも著者に同一化しているに違いない臨床家兼翻訳家の先生からお話を伺いたい、という個人的な希望を先生にお伝えしたところご快諾くださいました。

そこで、昨年から今年にかけての年末年始は特別で、ご自宅で過ごされる方が多いのではないかと思い、ざっとでも本を読んでからご参加いただきたいというお願いをつけて身近なみなさんにお声がけをしたところ、なんと15名という思ったより多くの方が集まってくださいました。オンラインでしたので普段はお会いできない方がご参加くださったこともとても嬉しかったです。

筒井先生には、企画から実施までの短期間にもかかわらず、大変充実した資料をご準備いただきました。また参加者のみなさんも「ざっと」ではない読み方、しかもそれぞれの臨床現場に即した実感のこもったご意見、ご感想を持ちよってくださり、活発なやりとりができ、2時間があっという間に過ぎてしまいました。

スチュワートは医師であり、精神分析家です。英国精神分析協会の訓練分析家でした。
その人と理論については、本書をお読みいただければと思いますが、精神分析における位置づけとしては、ウィニコットやバリントの後の世代の
独立派として分類されています。

本書を読むと、スチュワートは、スーパーヴァイザーであるバリントの理論の批判的咀嚼をはじめ、一般開業医として、精神分析家として、丁寧で柔軟な臨床に基づいた議論を展開した分析家だったという印象を持ちます。

ちなみにバリントは『甘え』理論の土居健郎先生(『「甘え」の構造』など著書多数)と共通した考えを持っており、
相互に影響を与え合った分析家です。

筒井先生はその
バリント入門』(スチュワート著)の訳者のおひとりでもあり、今回の読書会ではバリントの退行概念のこともわかりやすく説明してくださいました。

今回、本書を通じて、スチュワートが催眠を手放した理由、オイディプスとイオカステ母子(夫婦)の新たな視点からの読解、大変重い症例に対するマネージメントと精神分析実践の描写など、様々な観点からスチュワートと触れ合い、それぞれが興味を持った概念や症例について話し合えたことで本書の全体像が浮かびあがり、私たちの臨床的な視野を少し広げることもできたように思います。

また、ウィニコットのemptinessの概念に心惹かれた方も多かったようで、これまであまり独立派の精神分析家に馴染みのなかった方にも良い出会いがあったようでした。出会いの価値を実感します。

この一年、コロナ禍において、私たち臨床家もこれまでとは異なるマネージメントと実践について思いを巡らす必要に迫られました。患者やクライエントとともにいるために自分たちになしうることは何か、それぞれが懸命に考えざるを得なかった一年だったと思います。そして今も見通しがきかないその状況は持続しています。

そんななかだからこそ企画できたこの読書会でもありますが、精神分析という同じ学問に魅力を感じ、学び、試行錯誤を繰り返している仲間たちと和やかで自由な時間を持てたことは、今年2021年もなんとか持ちこたえよう、という力を与えてくれたようにも感じました。

以下に、当日にも名前をあげた文献を載せておきました。
ご興味のある方はご参照ください。

 

第四章「内的空間の体験における変化」の初稿。
PEP Web - Changes of Inner Space
shar.es/ao5FIR


H.ガントリップ『対象関係論の展開』 小此木・柏瀬訳(誠信書房)ー中古なら入手可


ハロルド・スチュワート『バリント入門
https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b514987.html

フェレンツィ『精神分析への最後の貢献ーフェレンツィ後期著作集』
http://www.iwasaki-ap.co.jp/book/b195833.html

フェレンツィ 『臨床日記【新装版】』
https://www.msz.co.jp/book/detail/08695/


リトル『ウィニコットとの精神分析の記録

精神病水準の不安と庇護【新装版】』 
http://www.iwasaki-ap.co.jp/book/b195859.html


バリント『一次愛と精神分析技法』森・中井・枡矢訳(みすず書房)

https://www.msz.co.jp/book/detail/08696/
バリント『新装版 治療論からみた退行 基底欠損の精神分析』(金剛出版)
https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b514902.html


サンドラー『患者と分析者 精神分析の基礎知識』藤山・北山監訳(誠信書房)

http://www.seishinshobo.co.jp/book/b87911.html

ウィニコット(1941)
On Influencing and Being Influenced

ウィニコット(1963)
Fear of Breakdown
Donald Winnicott Today (The New Library of Psychoanalysis)

Abram, Jan (EDT)
↑emptinessはウィニコットのFear of Breakdownにある概念でスチュワートもそれを引用しています。



J・ミルトンら『精神分析入門講座ー英国学派を中心に』
http://www.iwasaki-ap.co.jp/book/b195647.html
舘直彦『ウィニコットを学ぶ 対話することと創造すること』
http://www.iwasaki-ap.co.jp/book/b195932.html

ウィニコットの音源
Audio recordings - Oxford Clinical Psychology Introduction to Winnicott’s Broadcasts


マイケル・ジェイコブス 『 ドナルド・ウィニコット その理論と臨床から影響と発展まで』
http://www.seishinshobo.co.jp/book/b472746.html

お問い合わせはこちら